はじめに

オーケストラの中で重要な位置を占める楽器、ハープ。クラシックではおなじみの楽器ですが、その構造などについては身近に演奏される方がいない限り、なかなかピンとこない方もいるのではないでしょうか。特にオケのシミュレートをされる方にとっては、「ハープらしい演奏」のシミュレートに頭を悩ます方もいらっしゃると思います。そこで今回はハープを解説していきたいと思います。

ハープの構造とその演奏法

ハープは47本の弦を持ち、それらは変ハ長調の全音階に調整されています。また、6オクターブ半にも及ぶ音域はオーケストラで用いられる楽器の中で最も広い部類になります。そして後述するペダル操作により、最高音の弦であるG♭弦はG♯まで鳴らすことができます。

ハープの自然音域

また、ハープには7本のペダルがあり、それらは各音名(つまりC♭からB♭)に対応しています。これらのペダルは2段階踏み込むことができ、まったく踏み込まない状態では変ハ長調、中段まで踏み込むと半音上がってハ長調、そして下段まで踏み込むとさらに半音上がって嬰ハ長調になります。なお、ペダルは踏み込んだ状態でロックすることができます。

このように弦が各オクターブ7本しかないこの楽器ですが、このペダルのおかげで、例えばヘ長調にしたい場合にBのペダル以外を中段まで踏み込むことでヘ長調にしたり、また、ト長調にしたい場合にすべてのペダルを中段まで踏み込み、さらにF♭のペダルを下段まで踏み込むことでト長調にしたりと、ペダル操作ですべての調を演奏することが可能になります。

まったく踏み込んでない状態 1段踏み込んだ状態 2段踏み込んだ状態

各ペダルはその音名の弦すべてに作用しますので、例えば、同時にGとそのオクターブ上のG♯、またはG♭を演奏することはできません。ただし、A♭弦のペダルを踏まずにA♭(つまりG♯)としたり、F♭弦のペダルを下段まで踏み込みF♭(つまりG♭)にする等、異名同音の形で演奏することは可能です。この構造上、極端な半音階のフレーズは演奏できません。

なお、ペダル操作にはある程度の時間を要しますので、作曲時にはその時間を考慮する必要があります。また、ハープは両手の小指を除く各4本の指、計8本の指で演奏します。したがって同時に鳴らすことのできる音数は8音に限られます。

グリッサンド

ハープの演奏で最も特徴ある奏法は、やはりグリッサンドといえるでしょう。グリッサンドの記譜法には様々なものがありますが、例えば以下のように記されてたりします。譜例ではペダルの踏み込み方を表す記号(ペダル記号)が記されていますが、これはペダルの配置に従って左側より「レドシ(左足側)」、「ミファソラ(右足側)」の順に表記してあります。

グリッサンドの一例

この場合、各ペダルのセッティングは下表のようになり、実際の演奏は下譜のようになります。

ペダル C♭ D♭ E♭ F♭ G♭ A♭ B♭
ペダルの位置 中段 中段 中段 下段 踏み込まない 中段 下段
実音 C D E F♯ G♭(F♯) A B♯(C)

実際の演奏

ここで注意しておきたい点は、実音F♯とCが2つ続けて鳴っている点です。

グリッサンドは各弦を順々に弾いていくため、その箇所のコードに単純に合わせると響きが濁ってしまうケースがあります。そこで響きを整えたりするために、このようなセッティングを行ったりします。譜例では、この箇所のオケ全体のコードは多分D7になっているのでしょう(って僕が適当に作った譜例ですが(^^ゞ)。その場合、D7の構成音(D、F♯、A、C)にGやBの音が半音でぶつかってしまうことを防ぐために、このようなセッティングを行ったりするわけです。この特徴ある音形がハープ独特の和音の響きを作り出しているとも言えます。

また、譜例は一直線に駆け上がっていくものでしたが、作曲者によっては音の駆け上がり方を矢印などを用いて細かく指示しているケースもあります。その場合は適宜その指示に合わせて打ち込んでいく必要があります。

音色のセッティング

※近年では俗にいうDTM音源ではなく専用音源を使っている方がメインと思いますので、以下の内容は実情にそぐわないかと。

実際のハープはピアノと同様、低音になるにつれリリースタイムが長くなり、そして高音になるにつれリリースタイムが短くなります。よって打ち込む際には音高に合わせてリリースタイムを調整するとよりリアルになります。コツとしては、基本の設定でリリースタイムを少し長めにしておいて、ノートナンバー80~90くらいからだんだんとリリースタイムを短くしていくと、わりといい感じになります。

また、ハープは弦をはじくようにして弾いていきますが、グリッサンドはどちらかというと手を滑らせるように弾いていくため、グリッサンドの打ち込み時はアタックを遅くした方がリアルになります。DTM音源のハープはどうしても通常の奏法時の音がサンプリングされているため、アタックは思っているよりも結構遅めにした方がより良い結果が得られると思います。

まとめ

以上、ハープについて解説していきましたが、ハープは曲に彩りを与える重要な楽器ですので、より「らしい」打ち込みをしていくと曲全体のクオリティもアップするのではないでしょうか。何しろクラシックに限らず様々な局面で使用される楽器ですので、この機会にぜひお試しいただければと思います。